前の記事でも説明した通り、GIMPのカラーモードにはRGB形式、グレースケール形式、インデックス形式の3通りがあります。
また、精度と呼ばれる設定があり、RGB形式とグレースケール形式では、色の精度は256段階 / 65,536段階 / 4,294,967,296段階から選択することができます。 さらに、小数点を持った半精度浮動小数点数、単精度浮動小数点数という精度もあります。
GIMP 2.8系までは精度は8 bit 整数(256段階)のみでした。 よって、RGB形式で表現できる色は256 x 256 x 256の16,777,216色(1677万色)でした。 同様に、グレースケール形式では256色だったのです。
1677万色という数はとても多いように感じます。 しかし、赤・緑・青のそれぞれで考えるとわずか256段階です。 最近のデジタルカメラではRAWデータを出力できるものが多くなっていますが、RAWデータでは、赤・緑・青成分はそれぞれ4096段階 から 65536段階で表現されます。
上記のように、最近では、高精度の画像データを扱うことが当たり前になりつつあります。 しかし、GIMP 2.8系では内部でたった256段階しか表せなかったため、画像を開いた時点で劣化していたのです。
また、256段階でしか色を扱えないと、GIMP内部での加工によって画像が劣化することもあります。 色調補正などを行った場合に、補正前は差のあった色同士が、加工後には同じ色になってしまうこともあります。
そのような背景があり、GIMP 2.10系からは高精度で色を扱えるよう大幅な見直しが行われました。 GIMP 2.10系では、色の表現は、
に加えて、
でも処理できるようになり、表現できる色が一気に広がりました。 赤・緑・青成分がそれぞれ 4,294,967,296段階で表現されるということは、
の 79,228,162,514,264,337,593,543,950,336色を表現できるということです。
また、GIMP 2.10系では、
と呼ばれる小数点を扱えるデータ表現もできるようになっています。 扱う画像に応じて、利用者が色精度を自由に選べるようになったのです。
高深度カラー処理できるようになったことで、GIMP内部での加工による劣化は極限まで抑えられます。
また、RAWデータも今までよりも高精度で扱えるようになりました。 GIMP 2.8系までは『RAW現像ソフトウェア』を使ってRAWデータからJPEGファイル(またはTIFFファイル)を生成し、それをGIMPで読み込んでいました。
JPEGファイルは1677万色までしか表現できません。 TIFFファイルは281,474,976,710,656色を扱えますがGIMP 2.8系で読み込むと1677万色に補正されていました。 つまり、どうやっても1677万色でしか扱えなかったのです。
しかし、GIMP 2.10系からはTIFFファイルを281,474,976,710,656色のまま開くことができます。 もはや劣化はしません。 RawTherapeeやdarktableなどの『RAW現像ソフトウェア』を使ってRAWデータからTIFFファイルを生成し、それをGIMP 2.10系で読み込めばいいのです。