ファジー選択ツールは、類似色の連続部分を範囲選択するためのツールです。
マウスの左ボタン(
)のクリックで、そこからつながる類似色の範囲が囲まれます。
選択範囲の内側は各種処理の対象となりますが、選択範囲の外側の画像は保護されます。 つまり、画像の一部を保護するためのマスキングの機能です。
また、選択範囲の境界に沿って線を引くというような使い道もあります。
ファジー選択ツールは精密な選択には向きません。 最終的にパスやクイックマスクを使っての微調整が必要になるでしょう。
GIMPの範囲選択は、1回の操作で完了するだけではありません。 1回目の選択範囲に2回目の選択範囲を足すというようなこともできます。
同様に、既存の選択範囲から引いたり、既存の選択範囲との交差領域(共通の領域)を新たな選択範囲にすることもできます。
境界付近をぼかすこともできます。
ファジー選択ツールの使い方を紹介します。
まずは、基本的な範囲選択を行ってみましょう。 なお、ファジー選択ツールは、クリックで操作する手順とドラッグで操作する手順がありますが、まずは、クリックでの操作から説明します。
上図のように画像を開きます。 鉢植えの花を上から写した写真です。
今回は、赤色の花の部分を選択してみましょう。 まず、ファジー選択ツールに切り替えます。
上図のようにツールボックスからファジー選択ツールを選択します(またはキーボードのUを押します)。
続いて、選択したい色のピクセルをクリックします。 選択したいのは赤色ですから赤色の場所をクリックします。
上図のように花びらの赤色の場所をマウスの左ボタン()でクリックします。
上図のようにクリックした位置の周囲が範囲選択されます。 なお、範囲選択されているのは、クリックした点と類似色が続いている部分です。
ただし、見ての通り、選択範囲が狭すぎます。 周囲にも赤色が続いているのですが、範囲選択が広がっていません。
ではここで、ツールボックス下部のツールオプションに注目してください。
上図のように『しきい値』という項目があります。 この項目が、類似色として認識する色の差の範囲を設定する項目です。
『しきい値』の数値が小さくなると、類似色と認識する範囲が小さくなり、結果、選択範囲は狭まります。 逆に数値が大きくなると、選択範囲は広がります。
なお、しきい値というのは、クリックした位置との差です。 隣り合うピクセルとの色の差ではなく、クリックした位置との色の差が『しきい値』以下であれば選択範囲に加えられます。
現在設定されている 15 では小さすぎますので 50 に変更します。
上図のようにしきい値を 50 に設定します。
では、もう一度、範囲選択してみましょう。
上図のように今回も花びらの赤色の場所をクリックします。
上図のようにクリックした位置からつながっている赤色の部分が、ほぼ選択されました。 しきい値を大きくしたことで、類似色として認識する範囲が広がったためです。
ただし、選択範囲が『まだら』になっている部分があります。 では、しきい値をもっと大きくすればいいかといえばそれも違います。 しきい値を大きくすると、地面や葉の部分などの余計な部分が選択範囲に入ってしまうことになるのです。
では、どうすればいいかというと、 自由選択ツールや電脳はさみツールと同じく微調整が必要になります。 パスやクイックマスクを使って選択範囲を微調整することでキレイに囲むことができます。
ここで左上の花に注目してみましょう。
上図のように左上の花は赤色なのに選択範囲には含まれていません。 このように、『ファジー選択ツール』では、類似色であっても離れている場所であれば選択はされません。
続いては、ドラッグでの操作について説明します。
まずは、範囲選択を解除します。 キーボードのCTRL + SHIFT + Aを押して範囲選択を解除します。
上図のように選択を解除します。
今度は、葉や茎などの緑色の部分を選択してみましょう。
上図のように葉の緑色の場所でドラッグを開始します。
なお、マウスの左ボタン()は押したままにしておいてください。
上図のようにドラッグを開始すると、類似色の範囲が囲まれます。 つまり、最終的にどのような選択範囲になるのかのプレビュー表示のようなものです。
では、マウスの左ボタン()は押したまま、マウスを右へ動かしてください。
上図のようにマウスを右方向へ動かします。
赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。
なお、マウスの左ボタン()はまだ離さないでください。
上図のように囲みが広がります。 花の中心も囲まれていることがわかります。
このように右方向にドラッグすると『しきい値』が大きくなり、選択範囲が広がります。 なお、下方向にドラッグしても同じように選択範囲が広がります。
では、今度はマウスを左に動かしましょう。
もちろん、マウスの左ボタン()は押したままです。
上図のようにマウスを左方向へ動かします。
赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。
なお、マウスの左ボタン()はまだ離さないでください。
上図のように囲みが狭まります。 このように左方向にドラッグすると選択範囲は狭まります。 なお、上方向にドラッグしても同じように選択範囲は狭まります。
では、ドラッグで選択範囲を適切に調整してからマウスの左ボタン()を離してください。
花や背景が含まれないように調整すればいいでしょう。
上図のようにクリックした位置からつながっている緑色の部分が範囲選択されます。 クリックでの操作と同じく、キレイには選択されていません。 よって、パスやクイックマスクを使った選択範囲の微調整が必要です。
最後に、クリックする位置やドラッグを開始する位置についての補足です。
上図のように画像中には、周囲とは異なる色の小さなピクセルが混ざっていることも珍しくありません。 暗い場所で高感度で撮影した写真などに含まれるノイズなどがその例です。
このような周囲と異なる色の上でクリックやドラッグしてしまうと、狙った通りの選択範囲にはなりません。 ファジー選択ツールでは、クリックやドラッグの開始位置がとても重要です。
選択範囲は、追加したり削除したりできます。 手順については、知っておきたい機能 > 範囲選択 > 選択範囲の追加と削除を参照ください。
選択範囲の境界は『ぼかす』ことができます。 手順については、知っておきたい機能 > 範囲選択 > ぼかし選択を参照ください。
選択範囲は、チャンネルと相互変換することができます。 手順については、知っておきたい機能 > 範囲選択 > チャンネルとの相互変換を参照ください。
選択範囲は、パスと相互変換することができます。 手順については、知っておきたい機能 > 範囲選択 > パスとの相互変換を参照ください。
選択範囲の選択率は、視覚化することができます。 手順については、知っておきたい機能 > チャンネル関連 > クイックマスクで選択率を視覚化を参照ください。
説明できなかったその他のツールオプションの意味を以下に掲載します。